楽天の株価が急騰した理由──赤字続きでも期待感高まる

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楽天グループは、5期連続の最終赤字を記録したにもかかわらず、株価が急上昇するという意外な展開を見せた。市場関係者の間では、「赤字は続いているが、将来への明るい見通しが見え始めている」との見方が広がっている。

赤字幅が縮小、モバイル事業の改善が主因

2023年12月期の連結決算では、楽天の売上高は前年同期比7.8%増の2兆713億円となった。一方で営業損益は2128億円の赤字となったが、これは前年の3716億円の赤字から大幅に改善された。

この赤字縮小の背景には、主にモバイル事業の収支改善がある。モバイル部門単体では3375億円の赤字を計上したが、前年から約1400億円の改善を達成した。売上の伸びに加え、コスト削減や基地局整備の完了が大きく貢献している。

また、楽天市場を中心とするインターネットサービスや楽天カードを含むフィンテック事業も堅調で、取扱高の増加により収益を押し上げた。

無配発表でも投資家は前向きな反応

楽天は2023年決算で配当を行わない方針を発表した。これは過去20年で初めての無配となる。しかし、株価は2月20日時点で749円となり、前週比で19%も上昇した。

一部アナリストは、「モバイル事業の改善が想定以上に進んでいる」として、サプライズはなくとも安心感が買い材料になったと分析している。

モバイル事業、単月黒字化が目前か

楽天は2024年12月期の業績予想をまだ公表していないものの、モバイル事業については2024年末までにEBITDAベースで単月黒字化、2025年通期での黒字化を目指している。

楽天が黒字転換を実現するには、いくつかの指標が鍵となる。特に注目されているのは、契約回線数の推移だ。

2023年12月末時点のモバイル契約数(MVNOを除く)は596万回線で、10〜12月期だけで84万回線の純増となった。これは過去のキャンペーン期を除けば非常に高い伸び率だ。

楽天は2024年末までに契約数を800万〜1000万回線に拡大することを目標に掲げており、ユーザー1人あたりの平均単価を2500〜3000円と想定している。現時点の増加ペースを維持できれば、単純計算で932万回線に達する見通しだ。

法人契約が牽引、課題は個人ユーザー

しかし、契約数の増加を支えているのは法人ユーザーが中心であり、個人向けの普及には課題が残る。法人向けサービスは2023年1月から本格展開が始まり、既存の約90万社の取引先を中心に順調に契約を増やしている。

ただし、日本全体で見た法人向け携帯契約の比率は1〜2割程度にすぎず、個人ユーザーの拡大なくしては成長に限界がある。加えて、法人契約は個人向けよりも平均単価が低く、2023年10〜12月期の平均単価は1986円と前四半期から3%下落している。

楽天が目指す黒字化ラインに達するには、ユーザー単価を現状より2割以上引き上げる必要がある。

個人ユーザー向け施策を強化

こうした状況を受けて、楽天は個人向けの利用者を増やすための施策を強化している。2月1日からは、既存ユーザーが新規ユーザーを紹介すると、紹介者に7000ポイントが付与されるキャンペーンを開始。2月21日からは、家族で契約すれば1人当たり月額100円の割引が受けられる「家族割」も導入された。

三木谷浩史会長兼社長は、2月14日の決算発表で「ユーザー単価を上げるための追加施策が必要。特に広告収入の拡大に注力していく」と述べ、楽天モバイル内での広告展開に期待を寄せた。

今後、データ使用量の多い個人ユーザーをどこまで獲得できるかが、楽天の収益構造改善の鍵となる。追加施策の具体的な内容とその効果に注目が集まる。